2023年6月23日更新:「月丼撮影のノウハウ 応用編」へのリンクを追加しました。
今回の記事はこんな内容です。
月と飛行機を重ねて撮る、通称「月丼」の撮影場所の選択方法と、私が3年超かけて習得した「月丼の撮り方」を惜しみなく紹介します。
なお、内容の中心は羽田空港デッキでの撮影のノウハウになりますが、他ベースの方にも参考になるように意識して書いてみます。
ちなみに「月丼とはなに?」な方もいるかも知れませんので、早速私が撮影した「最高品質」の月丼を紹介します。これが月丼です。
お月さまのどんぶりの中に飛行機の具だから”月丼”です。
なお、私がこれまで撮ってきた歴代月丼コレクションはこちら
月丼撮影のコツの「応用編」はこちら。
この記事(基本編)とあわせて「応用編」もご覧ください。
月丼になる理屈
「月丼」になる状態は 自分と月との間に飛行機が入って来て、月に重なって見えること になります。
よって、月丼撮影の成功確率をあげるためには下記に留意する必要があります。
- その日、月がどの辺りから昇るのかを把握する
- 撮影時、飛行機がどちら方向に飛んでいくか を把握する
なお、月は毎日昇り始める場所、昇り始める時間が違います。
また、飛行機も風向きによって飛ぶ方向が変わります。
以上から、その日、月と飛行機が重なって見えそうな撮影場所を選択する必要があります。
羽田の滑走路の整理
飛行機の飛ぶ方向を予想するためにまず羽田空港の滑走路の運用方法を整理します。
羽田空港にはA~Dの四本の滑走路があります。これが当日の風向きなどによって
- 使用する滑走路
- 離着陸する方向
が変化します。
飛行機の離発着ルールですが、ざっくり整理すると下記です。
- (燃費対策から飛行機の揚力を稼ぐ目的で)風が向かい風になるように離発着する
- 使用する滑走路は航空会社によらない
羽田の場合、どちら方面に行くのか、どちら方面から来たか で複数の滑走路をどう使用するのかが決まる
進入方向は真北を0度、真南を180度として360度表記の10の位で表現します。同じ滑走路を北風運用と南風運用で使用する場合は全く方向が逆になるので、ちょうど数字が18(180度)ずれた数字の呼称となります。
例:34Lは340度方向(ほぼ真北方向で進入)、向かって左側の滑走路を使用 ということになります。
例:34Rを逆方向で運用すると16Lになります
図でもう少し羽田の滑走路の運用ルールを整理します。
横風(東西方向)が強いなど、荒天時は一部例外がありますが、概ね下記と思っておけば大丈夫です。
■北風運用時
◯着陸
南方面から来る飛行機はA滑走路、北方面から来る飛行機はC滑走路に着陸
◯離陸
南方面に向かう飛行機はD滑走路、北方面に向かう飛行機はC滑走路で離陸
■南風運用時
◯着陸
南方面から来る飛行機はB滑走路、北方面から来る飛行機はD滑走路に着陸
◯離陸
南方面に向かう飛行機はA滑走路、北方面に向かう飛行機はC滑走路で離陸
■羽田新ルート運用時(南風運用限定、時間限定(15~19時のうち3時間程度))
◯着陸
南方面から来る飛行機はA滑走路、北方面から来る飛行機はB滑走路に着陸
◯離陸
南方面に向かう飛行機はB滑走路、北方面に向かう飛行機はC滑走路で離陸
A滑走路を使用することもあるみたいです。
なお、風向きは1日のうちでも変化します。午前中は北風運用でも午後は南風運用と変化することもあるので注意してください。
月の昇り方を予想する
こちらのサイトを参考にさせて頂いています。
サイト名は「日の出・日の入り方角マップ」ですが、こちらのサイトでは太陽の方角だけでなく、日毎に自分の立ち位置から見て月がどの方向に昇るのか もこの様な赤線で示してくれるので、これを参考にして撮影場所を決めています。
いよいよ月丼の撮り方
さて、、、お待たせしました。具体的な撮り方です。
◯撮影場所の決め方
- 月の昇り始める時間と昇り始める方向を確認
基本は月の昇り始め(東方向)を狙って撮影 - 当日の風速予報を確認。風が強いと離陸時の「上がり」が早くなるので、この辺りも参考にします。(ここは経験則もありますね・・)
- 羽田空港の天気予報などから撮影時間帯の風向きを確認し、飛行ルートを予想(撮影場所到着直前にも「Flightradar24」などで最新の飛行ルートをダメ押し確認)
以上から撮影ポイント決めます。
以下、羽田の展望デッキからの撮影を想定し、具体的な撮影場所の選択方法をいくつか例を示しますね。
なお、日によってはどのデッキからも難しい ってこともあります。いつでもどこかで撮れる ってことはないので注意してください。
撮影場所ですが、空港の展望デッキとしては
①第二ターミナルデッキ(図中の青色の■)
②第三ターミナルデッキ(図中の緑色の■)
が月方向の視界が開けて撮りやすいデッキです。
第一ターミナルからもガリバーデッキからなら月の角度によっては月丼を狙えますが、今回は第二ターミナル、第三ターミナルを例に説明します。
なお、第一ターミナルからでも最適な撮影場所選択の考え方は同じになります。
以降の図の中で「赤線」で囲まれた扇型内を月は昇り、東から西へ(図で言うと右→下→左へと)移動します。今回は「月が図のような場所から昇る日だった」として説明します。
その1:北風運用時
北風運用時はD滑走路からの離陸一択狙いになります。月の昇る場所からどのデッキから撮影に臨むか を検討します。月の昇る位置が図のような場合、第三ターミナルデッキでは飛行機が離陸前のポイントで月と重なるため、月丼の撮影はできません。
このケースでは第二ターミナルデッキが撮影場所として望ましい ということになります。
その2:南風運用時
南風運用時は第三ターミナルからC滑走路からの離陸を中心に、月の昇る角度によってはA滑走路からも狙うということになります。
つまりこのようなケースでは第三ターミナルデッキが撮影場所として望ましい ということになります。
なお、第三ターミナルからはC滑走路の状況が見えないため、C滑走路から離陸する飛行機の撮影開始タイミングは少々難しくなります。
機材の設定
- 手持ちでも頑張れなくはないですが、、、三脚は必須ですね。
- 撮影直前、撮影時、飛行機の動きを追いかけるのに集中できるので、レリーズもある方が望ましいです。
- SS(シャッタースピード)は1/1000より早く。
ISOとのバランスですが、もっと早くてもいいです。
SSが早いため、ISOは3200以上を推奨します。
- 月の明るさは変化するので、時々月だけを撮影してみて、白トビしていないか、暗すぎないか、ノイズが目立ちすぎていないか を見ながらSS、ISO、絞りを調整してください。
- 連写前提、カメラの最大連写数にして下さい。
- SSが早いので手ブレ補正は影響しないとは思いますが、三脚利用なので手ブレ補正OFFがいいと思います。
- 月が明るいのでAFでもピント合わせは行けるかも知れませんが、AFのタイムラグでタイミングを逃すのが嫌なので、私は月でAFにてピント合わせした後、MFに切り替えてAFはOFF(置きピン)にしています。
- また、撮影時のタイムラグを防ぐため、撮影後の画像再生はOFFにしています(これはおまじないみたいなものかも)。
- カメラはAPS-C、望遠レンズの最大望遠600mm(換算900mm)で撮っています。900mm換算でもトリミングなしだとこの程度の大きさにしか撮れませんので最大望遠で撮っています。
撮影の流れ
月に向けて機材を設置し、まず月だけを撮影し、カメラの設定の調整します。
また、月は思ったより早く動くので、画角の中央に月を収めるように時々カメラの方向をチェックします。
そして離陸する飛行機の軌道が月と重なる瞬間を待ちます。
月と飛行機が重なりそうになったらレリーズのシャッターボタンを押してひたすら連写。あとは運命を神に委ねます・・・・
撮影機材の紹介
飛行機撮影用機材の詳細は飛行機撮影編で触れていますのでこちらも参考にしてください。
ここではごく簡単に機材紹介をします。月丼の場合はこれに加えて”写真にはありませんが” レリーズ(リモートコード)があると便利です。
①三脚:Leofoto LP-324C
②雲台用クイックリリース:SmallRig 2406
→廃盤になってました、、、
③レベリング雲台:Leofoto LB-66
④雲台:Leofoto BV-10
⑤レンズサポーター:Velbon SPT-1
⑥L字プレート:RRS D500用
⑦カメラ+レンズ:Nikon D500+SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporary
↑D500の場合、レリーズはこれ。
↑D7500、Z6Ⅱなどの場合、レリーズはこれ。接続端子がカメラによって異なるので機種にあわせて選んで下さい。
まとめ
月丼は結局最後は・・・「運」の要素が強いです。
ただし今回のノウハウを読めばその確率は格段に上がると思います。
頑張って下さい。
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