2023年1月2日追記:『ATOLL』についてSONY向け以外にNikon、Canon向けも販売が開始されていたので商品リンクを追加しました。
今回はこんな記事です。
この製品が気になって調べていたところ、製品コンセプトが良く似た類似品を見つけました。
今回は「ATOLL」と「類似品」について使用感を中心に比較します。
「ATOLL」はSilence Cornerという会社がクラウドファンディングで開発した機材で、三脚座の無いレンズに対して三脚座相当の機能(前後バランスが取れる、構図切り替えが容易 等)が提供できる製品です。
「二層型回転リング」「三脚座」「カメラを固定するプレート」の3つのパーツからなる製品で、「三脚座」「プレート」はアルカスイス互換、また、「プレート」はPeak Designのキャプチャーに取り付けが可能というすぐれものです。
2023年1月2日追記
この記事の初稿時点ではSONY向けのものしか発売されていませんでしたが、Amazonの方でNikon、Canon向けの販売も追加されていましたのでリンクを追加します。
SONYの場合、サイズ『ATOLL S』を選択。
Nikon、Canonの場合は機種によりサイズを選択、あるいはさらに追加でベースプレートの追加が必要になるようです。
この製品が気になって調べていたところ、同等の機能を持つ製品を見つけましたので、「ATOLL」との比較を中心にレビューしたいと思います。
以降、多くの項目で比較をしていますが、すぐに評価が分かるよう、タイトルに(◎、◯、△、✗)の評価を併記しました。
◎・・・とてもよい
◯・・・よい or まあ使える
△・・・ちょっと難あり
✗・・・対応不可
あくまで 私の独断と偏見での評定 になりますが、参考にしてください。
入手した類似品
SWFOTOの『LS75』という製品になります。
製品のラインナップには『LS63』というモデルもあり、『LS75』が回転リングの径が75mm、『LS63』は回転リングの径が63mmで、Nikonのミラーレス機の様にマウント径が大きなものは『LS75』を選択します。
回転リング径に合わせて複数製品があるのはATOLLと同等です。
ATOLLとSWOFOTO(LS75)との比較
以降、多くの項目で比較をしていますが、すぐに評価が分かるよう、タイトルに(◎、◯、△、✗)の評価を併記しました。
◎・・・とてもよい
◯・・・よい or まあ使える
△・・・ちょっと難あり
✗・・・対応不可
あくまで 私の独断と偏見での評定 になりますが、参考にしてください。
全体の質感(ATOLL◎ SWFOTO◯)
ATOLLは銀色の塗装で、質感もとてもよいです。
よく見える位置にシンボルマークがあり、かなりかっこいいです。
一方、SWFOTOはカメラ系機材に定番の艶のあるブラックアルマイト加工です。
耐荷重(ATOLL◯ SWFOTO?)
ATOLL:20kg
SWFOTO:記載なし
あくまでメーカーの言い値にはなりますが、ATOLLの耐荷重20kgは支える機材を考えると問題ないかな と思います。
SWFOTOの記載がない点が少々気にはなりますが、そもそもこの機材を使って重量級機材の運用は想定していないので一旦気にしないことにします、、、
材質(ATOLL◯ SWFOTO◯)
メーカーの言い値ですが、どちらの製品も航空機用アルミニウム合金を使用している とのこと。
重さ(ATOLL◎ SWFOTO◯)
ATOLL:122g
SWOFTO:160g
ATOLLは肉抜きなどが丁寧に施されており、軽量化への努力が伺えます。
持った感じが見た目以上に「お、軽い」という印象。
一方、SWFOTOは肉抜きなどはなく、全体にのっぺりした印象。
こちら逆に持った感じは「思ったよりずっしりするな」という印象です。
回転リング(ATOLL◎〜△ SWFOTO△)
ここがこのコンセプトの製品の肝とも言える部分ですが、かなり差異があります。
ATOLLは2層のリングの内部に90度ごとにクリック感をもって回転を知らせる構造が内包されています。「カチッ」という感触がしっかり伝わるので見逃す心配はありません。
また、この機構が内部にあるためか、回転リングの動きはかなりスムーズでガタツキもほぼありません。
回転リングの回転負荷を調整し、固定するネジの頭は”あや目”のローレット加工(ひし形のギザギザ)で、滑り止めの点で効果がありそうです。ローレット加工の造形は高級感のある作りです。
また、このネジを外すと二層型回転リングが解体できるので、砂などが入った場合のメンテナンス性も良いです。
ただし、回転リングの高さ調整はあまり広く取られておらず(穴の全長は約10mm)、かつ、回転リングを一番下げたい場合はそのままではネジ穴のアクセスできないので、一旦、回転リングを分解して、ネジの位置を調整する必要があります。
メーカーのHPを見る限り、SONY系向けの製品では大丈夫そうです。
なお、回転リング締め付け用ネジのサイズはM4です。
一方、SWFOTOの回転リングの回転はかなり重たいです。
機材をつけるとそれなりに回せますが、SWFOTO単体では結構力を入れないと回りません。
また、1周回転する間に重い部分と急に軽くなる部分があり、回転の負荷がまばらです。
ATOLLと違い、SWFOTOは90度ごとの回転を知らせる仕組みは回転リングの外側に設置されています。
リングの一部にくぼみがあり、それが小さな突起状のものを通過することで90度の回転が分かる仕組みです。
これがかなり控えめに伝わるので一旦行き過ぎてから戻して確認をしないと分からないくらいの感触です。ここは残念。
また、2層の回転リングはATOLLと比べると多少ガタツキがあり、回転リングを締め付けるネジをそれなりに締めないと1mm程度カタカタとします。
回転リングの回転負荷を調整し、固定するネジの頭は平目のローレット加工(横方向のみ)です。
このネジを外すと(なぜこんな構造したのか理解に苦しみますが)軸だけが残る構造で二層型回転リングの分解は出来ません。
また、回転リング締め付け用のネジのサイズは一見M5に見えますが、根本で細いネジになっており、実質はM5よりも細いです(見た目はM3程度に見えます)。
回転リングの高さ調整はATOLL(穴の全長は約10mm)に比べると広く(穴の全長は約14mm)取られており、SWFOTOの場合は回転リングをどの位置にしてもプレートの位置調整用ネジへのアクセスが出来なくなることはありません。
プレート(ATOLL△ SWFOTO◎〜△)
ATOLLはPeakDesignのキャプチャーにつけられることを意識してプレート長はかなり小さめ(約40mm)で、カメラに取り付けするネジ穴の前後の調整幅がかなり小さい(約18mm)です。
アルカスイス互換のプレートです。
カメラにかなり近い位置まで回転リングを寄せることが出来ますが、一方で、調整幅が小さいため、(安定度とのトレードにはなりますが)回転リングが邪魔に感じてグリップより前に出したくても大きく移動させることが出来ません。
NikonのNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sレンズの場合、調整位置によって影響は変化しますが、手前のコントロールリングか、AFの切り替えスイッチのどちらかに干渉して操作出来ません。
また、下の写真を見ていただくと分かると思いますが、プレートの調整幅のうち、前後が極端な位置に取り付けるとわずかに垂直方向に傾きが見られます。
SWFOTOはプレート長が長め(約67mm)で、ネジ穴の調整幅がかなり大きい(約41mm)です。また、プレートの幅広部分はATOLLよりも後ろ側に設定されています。
プレート表面に貼られたゴム樹脂はATOLLより薄めで、プレートの横幅はATOLL(約51mm)よりはSWFOTOは狭い(約42mm)ですが、プレートに沿ってゴムの樹脂が両サイドに長めにつけられていることもあり、カメラに取り付け時に回転リングがズレにくいようにはなっています。
カメラへの取り付け位置によっては前述したように回転リングの垂直方向が傾くリスクがあるのは同様で、回転リングがある程度垂直になる位置にカメラの固定位置を調整するとかなり後ろにプレートがはみ出ます。
2022年12月7日追記
一旦、記事を公開後、SWFOTOでのプレートと機材との相性をさらに追加検証していた所、とんでもないことが分かりました。
とんでもないこと その1(悪い方):
SWFOTOの場合、プレートの前後位置の調整範囲がかなり大きいのですが、ATOLLほどカメラ側に寄せることが出来ず、最も寄せてもカメラと回転リングとの間に1cmほどの隙間が出来ます。
さらには、、回転リングを最もカメラに寄せた場合、目視しても分かるほど回転軸が傾いています。
とんでもないこと その2(いい方):
SWFOTOの場合、前後の調整幅は大きいのですが、NikonのNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sレンズの太い部分と回転リングが干渉するため、プレートの一番遠い端でカメラを固定することは出来ません。
このため、(細かい揺れなどで回転リングがカメラ本体に擦り傷をつけるリスクを覚悟の上で)回転リングをレンズが太くなっていく部分に密着させるのがカメラから遠い位置の限界となります。
ただしこうすることで、いくつか良いことが有ることが分かりました。
まず、カメラ本体から回転リングが離れるので、グリップ部分に指がそれなりに入ります。
回転リングの角が指にあたって多少痛いですが、グリップはなんとか握れます。
ある程度の空間が出来たので、ファンクションボタン、コントロールリング、AF切り替えボタン、レンズの取り外しボタンは操作出来るようになります。
(細かい揺れなどで回転リングがカメラ本体に擦り傷をつけるリスクを覚悟の上で)回転リングがレンズ本体と未着しているので安定度も確保できます。
回転リングの可動部に影響がない範囲でパーマセルテープなどで回転リングの内側を養生してあげるとレンズ本体へ傷のつくリスクは減らすことはできそうです。
さらにはプレートの固定位置がかなり前に行ったので、カメラの後ろ側にはみ出していたプレートがはみ出さなくなります。
かなり三脚座が前にいくので前後バランスが崩れてそうで気になりますが、それ以外はいい事だらけ、、、、
私の場合、この機材はレンズサポーターと併用する想定なので、前後バランスの悪さは問題ありません。レンズサポーターでバランス調整します。
三脚座(ATOLL◯ SWFOTO◯)
ATOLLは各エッジが面取りされており、厚さは5mm程度のアルカスイス互換の三脚座です。
回転リングの後ろ側にも張り出しており、前後のブレの防止対策をしています。
三脚座の根本付近は多少肉厚になって剛性を強化しています。
三脚座の固定用ネジはM5のネジ二本で回転リングに固定されています。
SWFOTOは単なるプレートの形状で特にエッジの処理などはありません。
こちらもアルカスイス互換の三脚座です。
プレートはATOLLよりやや厚めで6mm程度、長さも長いです。
ATOLLと違い、リングの後ろ側への張り出しはありません。
(回転リングの調整幅が大きい分、ここに張り出しが出来ない構造です)
三脚座の根本付近はATOLLと同等に多少肉厚になって剛性を強化しています。
三脚座の固定用ネジはM4のネジ二本で回転リングに固定されています。
三脚座のプレート部分の長さが長く、厚みがある分、ここの安定度はSWFOTOにやや有利に見えるものの、プレートを固定するネジがSWFOTOは細いため、優劣の比較は難しいです。
値段(ATOLL△ SWFOTO◯)
ATOLL:14800円
SWFOTO:LS75が6800円
ATOLLが倍以上ですね。
製品のクオリティの差を考えるとこのくらい差がつくのは無理も無い気がしますが、、、
L字プレートの装着可否(ATOLL✗ SWFOTO◯)
L字プレートをつけたたままで装着できるか を検証してみました。
私は手持ちのカメラについてはすべてL字サポートを付けたままにしています。
理由は下記です。
- 雲台取り付け時にいちいちプレートを装着するのが面倒
- プレート脱着を頻繁に行ってカメラのネジ穴を痛めたくない
- 縦構図での構図変更が楽になること
- 特にミラーレス機は私の手には少し小さいので長時間持っていると小指があまって辛いがL字プレートがあると指をかけられて楽
このため、機材は多少ゴツくはなりますが、「L字プレートはつけっぱなしでも今回の機材が装着出来ること」が理想なのです。
ATOLLは回転リングの上下の調整幅が小さいため、装着不可でした。
SWFOTO回転リングの上下の調整幅が大きいため、ギリギリ装着可能。
ただし、RRSのL字プレートの場合は中央部にネジ穴がないため、プレートの装着が不可。
SmallRigのL字プレートの場合は中央部にネジ穴があるため、プレートの装着が可能でした。
L字プレートがつけられるとこんな構成が取れるようになります。
できればATOLLで実現可能ならばよかったのですが、ブラック仕様でこれはこれでカッコいいなと、、、
さらにこんなゴツい?構成を取ることが出来ます。
- レンズサポーター:特注のSmallRig
- ニ層型回転リング:SWFOTO
- L字プレート:SmallRig(Z6Ⅱ用)
レンズサポーターマニアの本望です。
この構成かなり気に入ったので、別で記事にしてみました。
構図変更時の精度(ATOLL◯ SWFOTO△)
ATOLLは加工精度もよく、回転リングがスムーズに動くため、きっちり設定を合わせておけば横構図⇔縦構図を切り替えても構図のズレはほぼありません。
SWFOTOについては回転リングがスムーズに回転しないことと、加工精度の問題?なのか設定をきっちり合わせておいても横構図⇔縦構図の切り替えのたびに微妙に構図がズレます。
二層型の回転リングだけで非常に厳密な構図作りをするのであればSWFOTOでは厳しいかも知れません。
ただしレンズサポーターと組み合わせすることでこの弱点は補完出来ます。
2022年12月7日追記
SWFOTOは限界までカメラから離れた位置に回転リングの位置を調整するとレンズで回転リングが支えられるので、構図変更時の光軸のズレが補正されます。
いまひとつな所
すでに三脚フォトグラファー ハクさんの記事でも詳細説明されていますが、ATOLLについてはいまひとつな所がいくつかあり、それは同じコンセプトを踏襲したSWFOTOの製品でも変わりません。
ボタンが押しにくい
回転リングが邪魔になってレンズを外すボタン、ファンクションボタンが押しにくい。
回転リングの位置によってはファンクションボタンがほぼ押せません。
2022年12月7日追記
ただしSWFOTOは限界までカメラから離れた位置に回転リングの位置を調整するとボタン操作はそれなりに出来ます。
グリップが握れない
回転リングが邪魔になって指がしっかり入らず、グリップがしっかり握れないため、長時間手持ちでいると非常に手が疲れます。
ただしこれはPeakDesignのクラッチを装着しているといくらか緩和されます。
先日長時間の撮影で使ったものの、私はすべてのカメラにクラッチを付けているので、なんとか我慢できる範囲でした。
2022年12月7日追記
SWFOTOは限界までカメラから離れた位置に回転リングの位置を調整するとグリップはそれなりに握れます。回転リングの角に指があたって多少痛いですが。
機材設定に手間がかかる
別記事にも書いてますが、二層型回転リングの横構図⇔縦構図の切替時に構図が変わらないようにするには回転リングの水平・垂直をきっちり合わせて置く必要があります。
これが結構手間がかかります。
詳細はこちらの記事も参考にしてください。
どこまで正確に設定するか次第ですが、大変さが分かると思います。
まとめ
ATOLLは値段が高いだけあって、各所の工作精度、肉抜き、使用しているネジ等、流石の作りです。
ATOLL単品だと気付きづらいですが、今回の様に類似品と比較してみると違いがよく分かりました。
新しいコンセプトの製品なのでいろいろ課題があるかと思います。
ユーザの声を聞いて今後良いものに改善されているとよいですね。
とは言え、、、久しぶりに「気持ちが高まった製品」だったのは事実。
このカテゴリー(レンズサポーター)が盛り上がってくれるとレンズサポーターマニア?としてはうれしい限りです。
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